statement

今私が描いている絵画は、PCなどでクリアに画像が表示されるまでの[Now Loading]の画面に共通項を見いだせる。[Now Loading]のぼんやりとした色彩だけの画面。データが全て送られてくるまでの待機中の状態である。そこに写っているものが何なのわからない。色と陰影のみが画面に表示され得体の知れないものである。何もかもが細部までクリアに表示される前の、数秒のそのモラトリアムな状態に心惹かれる。不明瞭な色彩のみの時間が一番美しいと思うのである。
形を成す前の、命になる前の「魂」の状態を画布に留め置きたいと思って制作をしている。色彩の洪水の中に囲まれる事で、一瞬の時間の隙間に落ちる経験を味わいたい。

みえないものを描く。空気、光、ぬくもり。

物の輪郭を溶かしぼんやりさせる事で、囲まれ限定された物を無限へと解放することができると思っている。輪郭を消し去っていく事で、制作中に私は大きい自由を感じている。

2022
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自分で認識し 把握している 自分の意識のほかに、それより はるかに大きく
深い 無意識という部分が、人にはある。

意識の下に よこたわる この無意識という部分は、すべての人が 共通してもち、お互い影響しあい つながっているんだと思う。

また同時に この意識下の部分は、宇宙につながり 自然に呼応していると思う。

月のみちかけが 潮のみちひきをつかさどり、人は それを礎に生きてきた。

人間の体は、海と陸との水分比率と同じ割合で できている。

そして、体は 地球の一部として存在する。

母体の中には、月につかさどられた もうひとつの宇宙があると思う。

かつて みな うまれる前のひとときをその胎内宇宙ですごした 無意識の経験をもつ。

忘れてしまっている すべての人がつつまれていた、その胎内の記憶。

そのイメージが ふとよみがえって、あたたかな気持ちに もどれたら、
どんなに人は やさしくなれるだろう。

体の中の宇宙は 光のような白のイメージ
私は とびらをあける。                  2002 
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そのむこう

絵は壁になってはならない。

窓になる。

そのむこうに気持ちがすいこまれる窓という入り口。

むこうへ続く、こちらとむこうをつなげる窓。

中から外の風景を見るための窓ではなく、気持ちの入り口としての窓。
光を描きたい。

外からさす ひかりではなく、内に宿りうちからあふれ出すような光。

とても ぬくもりに満ちた光。

人の無意識の部分を揺り動かす事ができたら、すごいよなって思っている。 2004